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I遺言書

故人が生前に遺言書を作成していた場合、相続人の確定や遺産分割協議書の作成は不要です。逆に言うとそのふたつを故人が指定したものが遺言書なのです。


(1)遺言書とは

遺言書とは自分の財産を誰にどれくらい相続させるのかを指定したものです。もし遺言書を作らないと法定相続人が話し合いで決定することになり、結果として民法上の相続人以外の人に財産を残すことはできません。しかしこれがもし生きていれば誰にいくらあげようと自由なのですから、死んだ瞬間に法律に縛られるのは少し不合理です。そこで遺言書を作成すれば、好きな人に自由に財産を分けることができます。例えば法定相続人になり得ない婚姻届を出していない事実婚の配偶者や、子供の配偶者などにも相続させることができます。(但し遺留分については請求されれば払わなければなりません)

また遺言書が作成してあれば、遺産分割協議書というやっかいな書類を作る必要がありませんので、たいへんスムーズに相続手続きを行うことができます。


(2)遺言書の種類


◇自筆証書遺言

故人が生前に全文を自筆で作成した遺言書です。この自筆証書遺言は手軽で簡単、費用がかからない反面、紛失等の心配があります。


◇公正証書遺言

故人が生前に証人ふたりの立ち会いのもとで公証人に作成してもらう遺言書です。この公正証書遺言の作成には費用がかかりますが、専門家が作成するため確実です。加えて検認という裁判所による手続きが不要なため、相続手続きを早く行うことができます。


(3)遺言書の検認手続きについて

もし故人が自筆証書遺言を作成していた場合、裁判所による検認という手続きが必要となります。


検認とは遺言書の改ざんなどを防ぐため、遺言書を裁判所が確認するものです。検認は原則として相続人全員が裁判所に集まって行われ、検認調書というものが作成されます。そしてこの検認には遺言書の開封作業も含まれますので、もし封のある遺言書を発見した場合、例え配偶者などであったとしても絶対に開けてはいけません。勝手に開封すると過料という処分を受ける場合もあります。(但し、誤って開封してしまったとしても遺言書の効力は失われません)


(4)遺言執行者

遺言執行者とは遺言書に書かれた内容通りに遺言を執行する進行役のことを言います。普通は相続人全員が協力して手続きを行いますので必要ありませんが、例えば絶対もめそうな相続や、相続排除などを伴う相続、あるいは非嫡出子の認知を伴う相続など、複雑なケースではこの遺言執行者を遺言により指定する場合が多いようです。


(5)遺言書のサンプル(雛形)


以下に自筆証書遺言のサンプルを示します。




                遺言書


遺言者 北村修は下記の通り遺言する。


第1条 次の不動産を妻北村由紀子(昭和10121日生)に単独相続させる。

    1  所在   東京都北区緑山

      地番   7144

      地目   宅地

      地積   200.02平方メートル

        2   所在   東京都北区緑山71番地44

      家屋番号 7144

      種類   居宅

      構造   木造瓦葺2階建

            床面積  155.27平方メートル

           237.12平方メートル


2条 次の預貯金を長男北村柊(昭和40420日生)に単独相続させる。

    1  日本銀行 大手町支店 普通預金 口座番号 2363547

    2   東京銀行 日比谷支店 普通預金 口座番号 2348765


3条 上記記載以外の一切の財産を長女北村砂季(昭和44125日生)に単独相続させる。


                                                                       以 上

平成19111

           東京都北区緑山71番地の44

                      遺言者   北村修 ()




(6)遺言書作成上の注意点


◇民法第968条によって遺言書を作成するには「遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とされています。他人に頼んだり、パソコンで作成してはいけません。


◇作成した遺言書は封筒に入れ、封筒表面に「遺言書」裏面に遺言者の氏名を書いて、きちんと封印をしてください。また封筒の分かりやすいところに「開封前に、家庭裁判所で検認手続きが必要です」と明示してください。


◇雛形の第3条に示したように゛その他゛的な表示を入れたほうが実務としてはスムースに進みます。


◇一文字でも書き損じた場合は、書き直してください。(訂正印も可能ですが、書直しをお薦めします)


◇相続人は氏名に加え生年月日、また相続人以外に「遺贈」する場合は氏名に加え、住所と生年月日を記載することにより、相手を明確にすることができます。


◇遺言者は一人で作成します。仮に夫婦であったとしても複数人が共同・連名で作成してはいけません。


◇遺言はいつでも自由に取り消すことができます。例えば新しい日付で全文を作成し直せば、古い遺言書は撤回したことになります。もちろん作成した遺言書を破棄すれば、それも撤回したことになります。また遺言書で指定した財産そのものを破棄しても、これまた遺言を撤回したことになるのです。