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前項に示した売買契約書の各項目について、解説、並びに注意事項を整理しました。重要な事項ばかりですので良くお読みください。なお一部専門的な表現や、買主サイドの事項もありますが、正確をきするためですので、ご了承ください。
(1)売買の目的物
1)対象となる土地が登記簿通りに記載されているか確認します。地番、地目、地籍まで確実にチェックします。「他3筆」などの表現は契約書として不適切です。
2)実測面積や現況の地目と、登記簿上の記載とが異なる場合には併記します。
3)目的物が一筆の土地の一部である場合、売主は契約前に分筆登記などをしておくべきです。
(2)手付
一般的に契約時に手付金、次に中間金、所有権移転登記・引渡時に残代金を支払います。
(3)境界の明示、実測図の作成
1)売主は隣地所有者とのあいだで境界などの争いがある場合、そのままの状態で売ってはいけません。きちんと協議し、合意を得たうえで修正登記などを行い、その後売買を行うべきです。
2)売買時には原則として、売主の責任と費用で隣地所有者と合意のとれた境界標などを設置し、実測図を作成します。
3)境界標や測量図などがすでにある場合、それらは隣地所有者の合意を得ている必要があります。
4)隣地所有者との合意の内容は後日のトラブル防止のため書面に残すべきです。
5)実測図は原則として作成すべきですが、諸般の事情により用意できない場合、測量士や土地家屋調査士などの有資格者にそれに代わる境界確認書などを作成してもらいます。
(4)地積校正登記
実測の結果が登記簿上の面積と一致しなくても、一般的に地積更正登記までは行いません。
但し面積の乖離が同一性を失わせるほど大きい場合には必要となります。
(5)売買代金の支払時期、方法
1)支払日は法的には当日の午後12時までですが、実質的には金融機関などの営業時間内となります。また支払日が祝祭日の場合、法的には翌日に延長されますが、契約書作成時に支払日は平日となるよう設定すべきです。
2)通常支払いは現金(振込を含む)または預金小切手で行いますが、売主の引き出し可能時期を含めて、支払い方法について事前に調整が必要です。また手形や預金小切手以外の小切手による支払いは避けるべきです。
3)買主が契約書の支払日以前に自ら残代金を支払っても、売主は引渡時期を早める義務は法的にはありません。その逆もしかりです。
(6)売買代金の精算
1)本契約書のサンプルは登記簿上の面積により契約を行い、所有権移転登記までに実測し、その結果によって売買代金を清算する「実測売買」と呼ばれる売買方法です。このため清算用に1uあたりの単価を定めます。なおこの清算用面積は原則として建築基準法の有効部分のみとし、セットバック部や私道部を含まないのが一般的です。(セットバック部には建物の建築はできず、建ぺい率や容積率の計算上でも敷地面積には入りません)
2)上記「実測売買」の他に「公簿売買」と呼ばれる登記簿上の面積を最終の売買面積として、引渡までに実測図は作成せず、また後日実測面積と売買面積に差異が生じても代金を清算しなという売買方法もあります。この方法は公簿面積の精度が高い場合や、別荘・山林など測量費用が多くかかるものの他、取引を急ぐ場合などにも適用されます。
3)その他の売買方式として契約以前に売主が実測した面積により契約を行う方式もあります。
(7)所有権移転登記の申請、引渡
所有権移転登記の申請は売主が登記申請に必要な権利書や委任状などを買主に引渡します。(費用は通常買主が負担します)
(8)負担の消除
1)目的物に抵当権などが設定されていた場合、その実行により買主が所有権などを失うと、買主は契約の解除や損害賠償が可能となります。このため売主は所有権移転の時期までに、抵当権等を自己の負担で抹消しなければなりません。抵当権の抹消には抵当権者の抹消関係書類が必要です。また債権者が複数の場合、調整に時間を要します。
2)抵当権のほか、先取特権、地上権、賃借権、採石権、質権、根抵当権、買戻権、永小作権、地役権、留保権、使用借権、仮登記担保、代物弁済、譲渡担保、差押、仮差押、仮処分なども対象となります。(仮差押、仮処分の登記抹消には裁判所へ申請や委託登記などが必要)これら抵当権等が設定されている場合は、いつまでに消除できるかの確認が必要です。
3)権利関係が複雑なものは個人間直接売買には適しません。
4)下記の場合などには事前に関係者との調整が必要です
◇売主が目的物の売却代金で目的物の借入金を返済する場合
◇売主が住宅金融公庫など公的資金を利用している場合(残債務の返済時に担保権の同時抹消が困難なため)
◇抵当証券が発行されている場合(抵当権の抹消に時間を要するため)
◇オーバーローンの場合
(9)印紙代の負担
1)通常契約書は二通作成し、売主・買主が各々保管します。このため印紙代も折半となります。また当事者の一方分しか契約書を作成しない場合、保管する者にかかわらず、印紙代は印紙税法の連帯責任の規定(第3条2項)により折半となります。
2)貼付した印紙には当事者双方が消印します。
3)印紙の貼られていない契約書でも有効ですが、印紙税法により3倍の過怠税およびケースによっては罰金、科料、懲役に処せられることもあります。
(10)公租・公課の分担
1)固定資産税と都市計画税は市区町村が毎年1月1日現在の固定資産税課税台帳に登録された者宛に、毎年4月以降に納付書を送付します。公租公課の分担として、それらの清算方法を必要に応じて定めておきます。
2)清算する場合は「前年度の額で清算」したり「今年度、納付書が届いた時点で清算する」など様々ですが、一般的に下記のような日割り計算が多いようです。
3)引渡前日までを売主負担、引渡日以降を買主負担とし、365/366日で日割り計算し、納税義務者である売主に買主が支払う。また起算日については1月1日または4月1日とする。(収益や分担金、管理費や、電気、ガス、水道料金の清算などなどある場合、これと同じ基準で按分すべきです。
(11)手付解除
1)契約の相手方が履行に着手するまでなら、特に理由がなくても、また自分が履行に着手していても「手付放棄」や「手付倍返」により契約を解除することができます。この手付を解約手付といい、特約の無い場合に適用されます。
2)履行の着手とは一般的に「登記申請」「仮登記申請」「分筆登記申請」「代金との引換による引渡請求」「内金支払」「中間金支払」などが該当します。
3)契約の安定性を確保するため、特約として手付解除に期限を定める場合があります。
4)手付の額に制限はありませんが、あまり額が低すぎると安易に契約が解除される可能性がありますので注意が必要です。また本来手付は損害賠償・違約金とは別のものですが、違約金と同額にするケースが多いようです。
(12)引渡前の毀損
契約後から引渡前までに、自然災害など当事者双方に責任のない理由で土地が毀損した場合、特約により売主の負担となるのが一般的です。
(13)契約違反による解除
1)契約の解除には売主と買主の合意による解除の他、どちらか一方の意思表示による契約解除があります。このどちらか一方の意思表示による解除には「約定解除権の行使による解除」と「法定解除権の行使による解除」のふたつがあります。
2)「約定解除権の行使による解除」とはローン特約など、どのような時に契約を解除できるか、事前に当事者が定めたものです。また「法定解除権の行使による解除」とは、債務不履行など法律により解除できるケースが定められています。
3)債務不履行による契約解除
買主が代金を支払わないなど、重大な義務違反をおかした場合、債務不履行として原則契約を解除できます。ただし公租公課など付随的な違反については、重大な実害が発生しない限り解除することはできません。
4)履行遅延の場合は相当の期間を定めて催告しなければ解除できません。これに対して債務不履行の場合は催告なしで解除できます。
5)契約を解除する場合、通常配達証明付きの内容証明郵便を相手方に送ります。(相手方が複数いる場合には全員に送付)
6)契約違反による契約解除の場合、違反者に損害賠償を請求することができます。請求できるのは「契約の不履行と相当の因果関係のある損害」のみですが、実務としてはこの立証が難しいため、予め当事者間で損害賠償の予定額を定めることができます。額に制限はありませんが、実損害が予定額を上回ったとしても下回ったとしても予定額どおり支払わなければならず、この額は原則として裁判所も増減できません。
7)契約が解除された場合、当事者双方に原状回復義務が生じ、登記されていれば抹消、引き渡されていれば返還、受領している金員があれば返還、などをすみやかに行わなければなりません。
8)契約違反があった場合でも、当事者合意により契約を解除せず、損害賠償請求によって処置することもできます。例えば物件の引渡が遅れたことにより仮住まいが必要になった場合、その費用を損害賠償として請求しつつ、契約を継続させます。(但し契約時に損害賠償の予定額を定めていなければ、請求者が金額を立証する必要があります)
(14)融資利用の場合
1)買主が融資を利用する場合、事前に金融機関と調整し、ローン特約を付けるのが一般的です。
2)このローン特約がないと、仮に融資がおりない場合、買主は債務不履行の責任を負うことになります。
3)ローン特約は買主にとってはメリットですが、売主からすれば契約解除につながる不安要素となるため、買主には融資の承認が得られるよう積極的努力義務がある旨、契約書に明記します。
4)融資の承認が得られないため契約を解除する場合には「解除権留保型」と「解除条件型」のふたつのタイプがあります。
5)「解除権留保型」とは融資承認予定日までに融資の承認が得られなければ買主は契約を解除できますが、実際に解除するかどうかは買主の判断によります。一般的には「解除」を選択しますが、例えば親族から借りられるような場合には解除しない選択も可能となります。解除する場合で解除権の行使期間が定められていれば、この期間内に行わなければなりません。(遅れた場合には違約金を支払わなければならないケースもあります)
6)「解除条件型」とは融資承認予定日までに融資の承諾が得られなければ強制的・自動的に契約が消滅するものです。解除権留保型のように買主の判断は必要ありません。但し後日金策が整っても契約は失効したままですので、再度契約を結ぶ必要があります。
7)融資承認予定日や解除権の行使期間に変更が生じた場合には、書面に残すべきです。
(15)瑕疵担保責任
1)引渡後、隠れた瑕疵が発見された場合、買主は損害賠償請求が可能となります。加えて契約の目的を達成できない場合には契約を解除することもできます。但し損害賠償や契約解除ができるのは、瑕疵を発見してから1年以内です。また引渡から10年を経過すると損害賠償、契約解除とも時効になります。
2)物件の引渡後、あまり長い時間が経過してから損害賠償の請求などをされても事実関係の把握が難しくなるため瑕疵の「発見から」を「引渡から」と特約するケースがあります。但し売主が瑕疵の存在を知っていたにも係わらず買主に告知(説明)しなかった場合には、特約が無効となり民法の規定によって瑕疵の「発見から」1年以内となりますので注意が必要です。
3)瑕疵があることについて売主の故意や過失は必要となりません(無過失責任)ただし買主がその事実を知っていた場合には隠れたものとは言えないため免責されます。従って買主への告知(説明)はきわめて重要です。
4)契約時に瑕疵担保責任を負わないとする特約も可能です(中古住宅などが多いようです)が、心理的な瑕疵など、売主が知っていたにもかかわらず、その事実を告げない場合には責任を免れることはできません。
(16)付帯設備の引渡
庭石や樹木などの付帯設備があれば、契約前にそれらについて引渡の対象とするのかしないのか確認し、書面化しておくべきです。
(17)諸規約の承継
1)売主と第三者間との締結済みの契約は、売買によって全部が全部、当然に買主に継承されるとは限りませんが、下記などは継承されるのが一般的ですので、売主から買主へ十分説明し理解を得る必要があります。
2)建築基準法による建築協定、地域住民の任意建築協定
3)計画道路、区画整理事業、河川改修計画、高圧線の敷設計画等の説明事項、またはこれにともなう補償金の授受等
4)地方公共団体等の私道買い上等の予定
5)前面道路が私道の場合の通行権や管理規定、公道に出るための通行権、それら通行権が付着している土地の契約関係および状況
6)電気、ガス、水道等の配管が他人の敷地を利用している場合、また他人の配管が埋設されている場合等の土地の利用関係や配管の状況についての契約関係および状況
7)隣地からの越境物や隣地への越境物がある場合の土地の利用についての契約関係および状況
(18)契約者の氏名
1)契約の相手方が未成年者の場合、それを知らずに契約しても、後日一方的に契約を取り消される可能性がありますので、運転免許など公的な書類で年齢(生年月日)を確認してください。なおどうしても未成年者と契約をする必要がある場合、親権者を法定代理人として契約書に明示する必要があります。戸籍謄本や親権者の印鑑証明書などによりその内容を確認してください。
2)契約の相手方が成年被後見人の場合、それを知らずに契約しても、後日一方的に契約を取り消される可能性がありますので、登記事項証明書などで確認してください。なおどうしても成年被後見人と契約をする必要がある場合、成年後見人を代理人として契約書に明示する必要があります。成年後見人の印鑑証明書などによりその内容を確認してください。
(売買にさいして家庭裁判所の許可が必要な場合もあります)
3)被保佐人や被補助人についても一定の制約がありますので注意が必要です。
4)契約の相手方が代理人の場合、正式な代理人でなければ契約の効果が本人に及びませんので、代理の範囲が明示された委任状(実印押印)や本人の印鑑証明書などを確認する必要があります。
5)契約の相手方が株式会社の場合、代表取締役以外と契約しても、会社に効果が及ばない場合がありますので、登記事項証明書、定款、代表取締役の印鑑証明書などを確認する必要があります。
6)契約の相手方が共有者の場合、全ての共有者と契約しなければ、目的物の全体を取得することができませんので、登記簿などで共有者の有無や持分などを確認する必要があります。
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